がん緩和ケアと薬剤師の役割
聖隷三方原病院聖隷ホスピス所長 井上 聡

近年、緩和ケアの概念は、急速に変化・拡大しており、WHO(世界保健機関)の緩和ケアの定義も2002年に変更され、それまでの終末期ケア(ターミナルケア)だけにとどまらず「延命を目的としたがん治療とともに可能な限り早期から苦痛緩和と心理的支援を行うべきである。」との考え方になってきました。
わが国では、2006年に「がん対策基本法」が成立し、2007年に「がん対策推進基本計画」が策定され、すべての患者・家族の安心のために、がんの早期発見・予防や治療の初期段階からの緩和ケアの実施などが、重点的に取り組むべき事項として盛り込まれました。
また、2010年には、日本緩和医療学会より「がん疼痛の薬物療法に対するガイドライン」が出版されました。
今回、がん緩和ケアの現状について紹介し、このガイドラインをふまえたがん疼痛マネジメントのポイントについてチーム医療における薬剤師の役割を交えながらお話したいと思います。
資料:「がん緩和ケアと薬剤師の役割」(スライド)
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※本記事は、平成23年11月6日静岡県立大学で行なわれた、平成23年度第1回薬学卒後教育講座 『チーム医療における薬剤師の役割』(薬学部・静薬学友会主催)によるものです。
関東支部主催 卒後研修会のお知らせ
テーマ:活躍の場を広げる薬剤師
今回は、食品安全行政、がん治療の場で活躍するフレッシュな薬剤師を講師としてお招き
します。
参加者の皆さまには、薬学という基盤を活かして働くうえでこんな職域もあるのか、薬剤師として患者さんにこんな関わりかたができるのか、といった発見をしていただけることでしょう。
懇親の場も設け、講演や情報交換を通して「明日から自分もがんばろう!」と思えるような会にいたしますので、関東支部会員はもちろん、他支部のかたも、ぜひご参加ください。
【演題、講師】
1. 「食品安全の取組について」 木村日都美氏
(農林水産省 消費・安全局 消費・安全政策課、本学平成19年卒)
2. 「がん患者に対して薬剤師ができること」 東 加奈子氏
(東京医科大学病院薬剤部 がん専門薬剤師、東京薬科大学卒)
【日時】 平成23年11月20日(日)講演 14:00-16:00 / 懇親会 16:00-18:00
チラシPDFはこちら
【参加費】講演のみ 無料、懇親会 5,000円
※なお、懇親会参加費は学友会報第74号同封の払込用紙での
事前納入にご協力下さい(当日払いも可)
【日本薬剤師研修センター認定単位】1単位
【TKP東京駅ビジネスセンター】
住所 〒103-0028 東京都中央区八重洲1-5-3 不二ビル9F
アクセス
JR線 『東京駅』八重洲北口 徒歩2分
東京メトロ東西線・銀座線・都営地下鉄浅草線
『日本橋駅』A3出口 徒歩1分
東京メトロ丸ノ内線・東西線・千代田線・半蔵門線・
都営地下鉄三田線『大手町駅』
B10番出口 徒歩1分
平成22年度静薬学友会総会の開催について
会則により、下記の通り総会を開催いたします。会員の皆様、是非お誘い合わせの上ご参加ください。
なお、議事終了後は平成21年4月に医薬品化学分野教授として本学薬学部に着任されました眞鍋敬先生にご講演いただきます。
また、総会終了後には懇親会を開催しますので、情報交換の場としてご活用いただければ幸いです。
日時:平成23年5月22日(日曜日)午後1時より
〈総 会〉
午後1時~2時
議題: 1.平成22年度事業報告 4.平成23年度事業計画
2.平成22年度決算報告 5.平成23年度予算案
3.各支部活動報告 6.その他
〈特別講演〉
午後2時~3時30分
薬剤師研修センター1単位認定
「分子で遊ぶ(できれば社会貢献も)」
静岡県立大学薬学部医薬品化学分野 眞鍋 敬 教授
〈懇親会〉
午後4時~6時
懇親会参加費:5,000円
懇親会のみ参加費が必要です。(当日集金)
参加申込期限:平成23年5月18日(金)
当日参加も受け付けますが人数把握のためなるべく 事前のお申込みをお願いします。
申込方法・問合せ先:
○本ホームページのトップページ左上『マイページ』 の「各種お申込みの受付」から簡単に参加登録いただけます。
(会員ID、パスワードが必要です)
問い合わせ先:静薬学友会事務局
TEL 054-265-8763 FAX 054-265-8769
(事務所在室時間 月・水・金曜日 午前10時~午後3時)
子宮がん治療の現場から
~薬物療法の貢献と課題~
静岡赤十字病院産婦人科
日本がん治療認定医機構がん治療認定医 市川 義一

従来, 子宮がんは手術による摘出と放射線療法が治療の中心をなし, 化学療法などの薬物療法は再発治療などに限られていた. しかし, 現在では子宮頸がん(以下頸がん)に対して, 予防ワクチンの登場や放射線化学療法による根治的放射線療法予後の改善, 術後補助療法としての化学療法が注目されている. また, 子宮体がん(以下, 体がん)では, 高用量黄体ホルモン療法による妊孕能温存療法の試みや術後補助療法が世界的に放射線療法から化学療法にシフトしつつあるなど, 薬物療法が子宮がんの予防から治療予後の改善に至るまで幅広く用いられている.
1) 子宮頸がん
検診の普及や治療法の進歩により頸がん死亡率は低下してきたため, 「子宮がんは減っている」と誤認されるが, 頸がんは女性に発生するがんとしては乳がんについで2番目に多く, 20-30代では急激に増加している. 定期検診にて早期発見が可能だが, 上皮内癌-Ia1期に進展した場合, 少なくとも子宮頸部円錐切除術が必要である. 円錐切除術は妊孕能温存が可能だが, 術後の頸管短縮に伴い不妊症や早産, 前期破水などの周産期リスクが上昇することが明らかにされている.
近年, 頸がんの原因の99%は子宮頸部へのヒトパピローマウイルス(HPV)の持続感染であることが解明された. 2009年には本邦においてもハイリスク型HPV(16, 18型)に対する2価ワクチンが認可され, 頸がん全体の約80%の原因となるHPVを予防できる. 既に感染しているHPVを排除することはできず, 初交前の女児への接種が望ましいが, 自然感染例の多くは自然治癒, 再感染を繰り返しながら持続感染に至るため, 性交開始後であっても再感染を防ぐことで一定の予防効果は期待でき, 若年女性に対して積極的な接種を啓蒙している.
Ia2期-II期の浸潤がんではリンパ節郭清を含む準広汎-広汎子宮全摘術または放射線化学療法が必要となる. 早期浸潤癌の治療成績は手術療法, 放射線化学療法ともほぼ同等だが, 治療に伴う合併症のプロファイルが異なる. 手術療法では卵巣機能の温存(腺癌を除く), 性交能の温存(放射線療法では膣が萎縮し性交不能となることが多い)が可能であり, 放射線の晩発障害が懸念される20-40代前半の若年症例で選択されることが多い. また, Ia2-Ib1期に対して子宮頸部および傍子宮結合織, リンパ節を広汎子宮全摘術と同様に摘出し, 体部および卵巣を膣と縫合し妊孕能温存を図る広汎子宮頸部切断術(radical tracherectomy)も福音となっている. しかし, 排尿障害や下肢リンパ浮腫などを完全に防ぐことはできておらず, これらの合併症や手術侵襲を回避したい閉経前後から高齢の症例では放射線化学療法が選択される. 以前は放射線療法単独であったが, 1999年に化学療法を併用することで死亡率が30-50%減少したとの勧告があり, 放射線療法を行う場合にはCisplatinを中心とした化学療法を放射線とを同時併用することが標準治療となった.
広汎子宮全摘術例においてもリンパ節転移など再発高リスク群と判断された場合には補助療法として放射線療法が, 2000年頃からは放射線化学療法が施行されている. しかし, 放射線単独では遠隔転移が, 放射線化学療法群では重度腸閉塞などの亜急性期から晩発性の障害が高率に発生したため, 現在, 術後補助化学療法(パクリタキセル+シスプラチンやイリノテカン+ネダプラチン)を行う試みもなされているが現時点ではエビデンスは確立していない.
2) 子宮体がん
体がんは閉経前後や月経不順の長期持続などプロゲステロンに拮抗されないエストロゲンへの過剰暴露により発生する1型と, 子宮内膜からのde novo発がんによって生じる2型に分類される. 妊娠出産数の減少や食事の欧米化になどにより, 1型体がんの罹患率は年々増加かつ若年化傾向にある. 早期体がんの予後は比較的良好だが, 治療は第一に子宮および両側卵巣卵管の摘出, リンパ節の郭清を行うことにあり, 早期例であっても妊孕能の温存は難しく, 若年症例では治療により失うものは計り知れない.
ホルモン感受性のある1型体がんに対し, 高用量プロゲステロンを投与することで抗腫瘍効果があることは以前から知られ, Ia期体がんに対する高用量酢酸メドロキシプロゲステロン療法(MPA療法)による妊孕能温存が試みられている. MPA療法は90%近い症例に奏効, 病変消失が得られるため若年体がんの一選択肢となりうるが再発率は約50%と高く, 再発までの期間の中央値は6ヶ月から1年でホルモン療法の反復や子宮摘出が必要となるため, あくまで妊娠出産のチャンスを得るための姑息的治療法との認識が必要である.
体がんも進行再発例では予後不良である. 術後の再発を減らすために様々な補助療法が行われ, 欧米では放射線療法が補助療法として用いられエビデンスが構築されてきた. しかし, 本邦では化学療法を選択する施設も多く, これまで治療エビデンスが乏しいまま施行されてきた経緯がある. しかし, 2002年に米国婦人科臨床試験グループGOGからIII/IV期体がんに対するAP療法(doxorubicin+cisplatin) vs 全腹部放射線照射の結果, 化学療法の優位性が示され, 日本の婦人科臨床試験グループJGOGの2033試験においてもhigh intermediate risk群に対する術後補助化学療法(CAP療法)が術後全骨盤照射群に比し優位である可能性が示された. また, ヨーロッパのPORTECからは2000年, 2004年に術後放射線療法施行群と未施行群のRCTにおいて, 術後補助放射線療法は局所再発を減少させるものの, 全生存率や死亡率に有意差を認められず, 副作用は明らかに増加したと報告し, これらの報告から体がんの術後補助療法における化学療法の有用性が広く認められるようになってきた.
しかし, 国内における体がん化学療法にはいまだ問題がある. それはもっともエビデンスのある化学療法レジメはAP療法とされている中で, 国内の9割近い施設において卵巣がんの第一選択薬であるTC療法(paclitaxel+carboplatin)が主に用いられている点である. もちろんTC療法が体がんに奏効するとの報告は多く, 有用なレジメであるが, TC療法が治療後再発や全生存期間を改善したとのphase III試験の結果は現時点ではなく, エビデンスレベルの低い中で多くの施設の治療選択が行われていることは問題である. この問題を解決し体がんの標準治療を確立すべく, 現在ハイリスク子宮体がんに対するAP vs TC vs DP(docetaxel+cisplatin)のradomized phase III試験(JGOG2043)が行われ, すでに780例中746例の症例登録がなされており, 結果が待たれるところである.
資料:「子宮がん治療の現場から ~薬物療法の貢献と課題~」(スライド)
※こちらのスライドは現在調整中です。もうしばらくお待ちください。
※本記事は、平成22年11月21日静岡県立大学で行なわれた、第19回薬学卒後教育講座(薬学部・静薬学友会主催)によるものです。
低出生体重の長期予後
-疫学から学ぶこと、その限界と今後の展望-
浜松医科大学周産母子センター准教授 伊藤 宏晃

近年英国を初めとする欧州を中心とした疫学研究から、低出生体重児は成人期あるいは老年期における生活習慣病発症あるいは精神疾患発症のハイリスクである可能性が報告され話題となっている。このような概念は当初、提唱者の名からBarker仮説と呼ばれたが、Fetal Programming仮説、Fetal Origins of Adult Disease (FOAD)仮説などの名称を経て、広く発達期における環境因子が健康や有病率に影響を及ぼすというコンセプトからDevelopmental Origins of Health and Disease (DOHaD)という名称に集約されている。International Society for DOHaDにより、2011年9月には米国のオレゴン州ポートランドで7th World Congress of DOH
aDが開催される予定である。
一方、我が国では低出生体重児の出生が増加の一途をたどり今や年間約10万人に達している。しかしながら、現在において産科・新生児医療において遭遇する個々の低出生体重児に対して、海外の後方視的な疫学研究が果たして当てはまるか否か必ずしもエ ビデンスは充分ではない。さらに、低出生体重の疫学研究の多くは観察研究であり、何らかの介入研究は極めて少ないことから、母体(胎生期)、新生児期あるいは乳幼児期において予防的介入指針を立案するためには解決すべき問題点が多く残されている。例えば、欧州の疫学研究の多くは1920年代から1940年代に低出生体重児として出生した成人の健康や疾病の解析に基づいている。しかし、近年周産期・新生児医療は長足の進歩を遂げ、周産期死亡率あるいは乳幼児死亡率は格段に改善している。さらに、現代の食生活、生活環境は1920年代と大きく異なる。すなわち、欧州における疫学研究の根拠となっている胎児・新生児環境は現代において大きく変化を遂げている。したがって、その疫学研究の結果を現代の産科・新生児医療にあてはめることの妥当性について何らかの検証が必要であると考えられる。本講演では疫学研究から学ぶべき事、ならびに具体的な介入指針を作成するために解決すべき問題点、さらに今後の検討課題について概説したい。
資料:「低出生体重の長期予後-疫学から学ぶこと、その限界と今後の展望-」(スライド)
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※本記事は、平成22年11月21日静岡県立大学で行なわれた、第19回薬学卒後教育講座(薬学部・静薬学友会主催)によるものです。
胃癌に対する化学療法
-最近の進歩・現状・今後の展望-
静岡県立静岡がんセンター消化器内科部長 朴 成和
I. 切除不能・再発胃癌に対する化学療法
・これまでの歴史:1990年代
Best Supportive Care(BSC)とFAMTX (5-FU + Doxorubicin + Methotraxate)の比較試験では、FAMTXはBSCに比べて生存期間の延長(MST: FAMTX 10ヶ月、BSC 3ヶ月)が得られると報告されるなど、切除不能再発胃癌に対する化学療法の延命効果は明らかである。世界的に5-FU + Cisplatin (FP)療法が最も広く用いられているが、本邦で施行された5-FU持続静注療法(5-FUci)とFPとUFT + Mitomycin Cの併用療法の比較試験 (JCOG 9205)では、生存期間においてFP療法群と5-FUci療法群の間に差を認めなかった(生存期間中央値(MST): FP 223日、5-FUci 216日)など、3つの比較試験にて5-FU単独に比べて5-FUとCisplatin (CDDP)を含む併用化学療法は延命効果を示すことはできなかった。このように、世界的に認識された表運治療は確立されていなかった。1990年代後半には、S-1、Irinotecan (CPT-11)、Paclitaxel、Docetaxelなどの有効な薬剤が開発され、これらの位置づけを明らかにするための試験が展開された。
・最近の進歩:2000以降
2007年ASCO (American Society of Clinical Oncology)において、本邦から2つの第III相試験、JCOG9912試験とSPIRITS試験の結果が報告された。JCOG9912試験は、切除不能・再発胃癌を対象に、5-FU療法を対照群としCPT-11 + CDDP療法の優越性とS-1療法の非劣性を検証する試験であり、MSTは、5-FU群/CPT-11+CDDP群/S-1群は10.8/12.3/11.4か月と5-FUに対するCPT-11+CDDP 療法の優越性は示されず(p=0.055)、S-1療法の非劣性が示された(p<0.01)。一方、SPIRITS試験では、MSTはS-1群/S-1+CDDP群は11.0か月/13.0か月とS-1+CDDP療法の優越性が示された(p=0.037)。この結果を受けて、5-FU < S-1 < S-1+CDDPが示されたことになる。また欧米では、5-FUに対するCapecitabine、CDDPに対するOHPの非劣性が証明され、これらの結果より、本邦を含めて世界的にも(経口)プラチナ系+フッ化ピリミジン系薬剤の併用療法が切除不能再発胃癌に対する標準治療であると認識されている。
2009年ASCOにて、HER2陽性切除不能・再発胃癌に対する5-FUまたはCapecitabine+CDDP併用(FC)療法に対するtrastuzumab(T)の上乗せ効果を検証する第III相試験(ToGA試験)の結果が報告された。HER2はEGF受容体ファミリーに属する膜タンパク質であり、その細胞質領域にチロシンキナーゼ活性を有しており、HER2タンパク質の過剰発現は癌細胞の増殖の亢進、転移能の上昇など癌細胞の悪性化と関連することが非臨床研究から示されており、従来、乳癌ではHER2過剰発現例は予後不良であると言われていたが、trastuzumabの登場により、逆にHer2発現例のほうが予後良好になった。ToGA試験の結果、MSTは11.1か月/13.8か月(p=0.0046)とFC+T群の優越性が示された。HER2は、免疫染色で3+かつ/またはFISH陽性と定義され、胃癌全体での陽性率は10-20%にすぎないが、胃癌領域で初めて分子標的薬剤の有効性が示されたと同時に個別化医療の幕開けと考えられる試験であった。
II. 術後補助化学療法
2007年本邦から、Stage II/IIIの進行胃癌に対して、治癒切除後S-1(80mg/m2、4週内服、2週休薬)を1年内服する群と手術単独群との比較試験によって、S-1内服群の3年生存率が10%良好であると報告された12)(手術単独群70.1%、S-1群80.1%図3)。この結果により、少なくとも本邦においては、stage II/IIIの進行胃癌に対する治癒切除後のS-1による補助化学療法が標準治療として確立したといえる。Stage II、IIIA、IIIBのいずれのStageも10%の3年生存率の向上が得られた。
III. 今後の展望
上記のように、標準治療が確立し、分子標的薬が登場したことをうけて、現在もBevacizumab、Cetuximab、Lapatinib、RAD001、Sorafenibなど、他の癌種にて有効性が確認された薬剤の比較試験が進行中であり、さらなる効果の向上が期待される。
また、これらの分子標的薬のベースとなる化学療法についても、5-FU+CDDPにさらにDocetaxelの3剤を併用したDCF療法は、唯一FP療法に対して優越性を示したレジメンである。しかし、血液毒性が重篤であるため、本邦への外挿は困難であると思われる。最近、Docetaxelを隔週または毎週に分割投与する治療法が検討され、少なくとも毒性の軽減が得られている。投与方法の工夫により最強の化学療法レジメンを得るための比較試験が必要であると考えられる。
2009年ASCOにて、一次治療が増悪などの理由により中止された症例を対象として、CPT-11単独とBSCの比較試験の結果が報告された。これは、世界で始めて胃癌の二次治療による延命効果を示したものであり、上記のように、一次治療だけでなく、二次治療以降も含めた治療戦略の開発が重要であると思われる。

さらに、胃癌は大腸癌などと比較して、ヘテロな病態をとることが知られている。これらの患者・疾患の背景や遺伝子変異・発現などの違いに基づく個別化医療も検討されつつある。
これらの化学療法の進歩は、術前・術後の補助化学療法にも展開され、胃癌全体の治療成績が向上することが期待される。
資料
:「胃癌に対する化学療法」(スライド)
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※本記事は、平成21年11月8日静岡県立大学で行なわれた、第18回薬学卒後教育講座(薬学部・静薬学友会主催)によるものです。
~薬の専門家として安全・安楽な治療を行うためには~
静岡県立静岡がんセンター薬剤部主任 本川 聡
本邦での死亡原因の第1位である悪性新生物(がん)の対策を推進するために平成19年4月にがん対策基本法が施行された。その基本的施策には、専門的な知識及び技能を有する医師その他の医療従事者の育成や、医療機関の整備といったがん医療水準の均てん化が謳われている。我々薬剤師もチーム医療の一員として、がん薬物療法に関わっていくためにはがん治療やがん化学療法に関する高度で最新の専門的知識が求められるようになった。
今回は、薬剤師として安全にがん化学療法を行うために必要と思われる知識を概説する。
通常、がん化学療法は単剤または複数の抗がん剤について投与日、投与量、投与経路、投与時刻・投与時間などを決め、一定期間内で1つのコースを終了するため、これらの内容について指示可能な項目を整理し、まとめたものをレジメンと呼んでいる。レジメンと類似した言葉にプロトコールと呼ばれるものがあるが、これは対象症例や除外基準、評価方法などを含んだ治療計画書を意味することが多い。安全性と効果が適切に評価されたレジメンが院内の中央で登録・管理されていることは治療計画を遂行する上で重要なことであり、薬学的知識を持った薬剤師が、プレメディケーションや輸液を含めたレジメン設計に参画することが求められている。
近年、レジメン管理は電子カルテなどと連携されてシステム化が進んでおり、抗がん剤を含む薬剤の投与スケジュールや休薬期間、投与量のチェックなど、安全にがん化学療法を遂行するための機能が充実されるようになった。しかし、レジメンが院内の中央で登録されていない場合には、抗がん剤が薬剤部に注射箋などによりオーダーされた際に、がん腫や適応レジメンについての詳細な情報を得ることや厳重な薬歴管理が重要となる。我々薬剤師は、このレジメンをもとに医師がオーダーした薬剤の処方監査を行っていくことから、がん化学療法に関わっていくことになる。そして、薬剤の特性を理解して配合変化などに注意し、抗がん剤の曝露予防を行いながら安全に薬剤を調製していく必要がある。
このような安全管理のもとで抗がん剤が供給されても、腫瘍縮小や延命効果と引き替えに、消化器毒性や骨髄抑制などの薬物有害反応がほぼ全例に認められる。したがって、薬剤師は患者への薬物有害事象の情報提供や、その対策を講じるためのスキルが求められる。そのためには薬物のプロファイルや、有害事象の発現部位・発現時期などを理解していることが必須となる。抗がん剤による悪心・嘔吐や骨髄抑制は、がん化学療法を受ける患者にとって脱毛と並んで治療の開始や継続を左右する大きな問題となることがある。しかし、有害事象に対する支持療法は1990年代前半に5-HT3受容体拮抗剤や顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF製剤)が本邦で承認され、患者のQOL向上や計画的な治療の実現などに大きく貢献することとなった。悪心・嘔吐のマネージメントは、発現機序や催吐作用の強さを理解しておくことで、治療開始前後に症状緩和を図ることが可能となることや、レジメンを作成する際の参考となる。さらに、骨髄抑制によって生じる好中球減少は感染症のリスクを増加させ、敗血症などの重篤な感染症を発症させ生命を脅かすこともあるため、G-SCFの適正な使用方法や抗菌薬の投与方法を理解することも有害事象の症状緩和には必要である。
薬剤師は、がん化学療法におけるチーム医療の一員として、抗がん剤を吸収・分布・代謝・排泄といった薬物動態学や薬力学観点から検証することができる職種である。このため併用薬との相互作用などを理解し、最新の情報を収集する努力をしなくてはならない。1993年に抗がん剤との相互作用により、発売後40日間で15名もの死亡者を出した「ソリブジン事件」が起こった。これは、ソリブジンの代謝物がフルオロウラシル系抗がん剤の代謝を阻害し.フルオロウラシル系薬剤の血中濃度を高め,作用を増強したために起こった薬害である。我々は、このような医薬品の副作用による犠牲者を出さないためにも、薬剤師としての役割を果たしていく責務がある。
さらに、今後我々薬剤師が、がん化学療法に関わっていかねばならない領域は、薬剤師によるエビデンスの構築が考えられる。静岡県下では、
10施設が参加した薬剤師主導による多施設共同臨床試験が行われた。このような臨床試験の結果をもとに、薬剤師が医師や看護師に対して情報提供を行っていくことが将来的に必要と思われる。
このように、がん治療を行うための基本知識を提示したが、臨床の現場ではこの他にも様々な状況に遭遇することがある。最終的に安全で安楽ながん治療を行うためには、スタッフ間のコミュニケーションを密にする事であり、常に同じ情報を共有し合うことが大切である。
資料:
「がん薬物療法における薬剤師の関わり」(スライド)
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※本記事は、平成21年11月8日静岡県立大学で行なわれた、第18回薬学卒後教育講座(薬学部・静薬学友会主催)によるものです。